天理の石 — 第20話

第二十話 望曉

2026.08.04 7,408字 ・ 約13分
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 都の朝は、鐘で始まる。
宮城の東、官衙の並ぶ一角に、その部屋はあった。書き物の卓が一つ、椅子が一つ、壁際にがんが一つ。書棚はない。卓の上に、紙も筆も置かれていなかった。使われていない部屋のように見える。実際、この部屋の主は、ここで何も書かない。
男は、窓辺に立っていた。
外はもう明るい。塀の向こうで、官人たちが列をなして歩いていく。誰かが誰かに挨拶をし、誰かが笑い、誰かが小走りに追い越した。朝の音である。男はそれを、毎朝、同じ場所で聞いている。
二十五になる。
背は高くない。顔立ちは整っているが、覚えにくい顔だった。人の記憶に残らないように作られた顔である。作ったわけではない。十年、そのように暮らしていたら、そうなった。
衣は、官人のものではない。かといって道士のものでもなかった。灰色の、飾りのない衣である。袖は短く、動きやすい。腰に、剣を一振り提げている。
剣は、本物だった。
朝の勤めに、彼は宮城を歩く。誰も彼を止めない。彼が何者であるかを、この宮城の誰も正確には知らないが、誰もが、彼が裴将軍の縁者であることを知っている。焼け跡から拾われた孤児。将軍が引き取り、育てた。それだけの話である。
名は、望曉という。
道号である。俗名の方を、彼は使わない。

 物心がついた時には、既に山にいた。
彼の記憶は、玉雲観の湿った石畳の匂いから始まっている。それより前のことは、何も残っていない。父の顔も、母の声も、彼の中には影一つなかった。誰かが彼をそこへ置いていったのか、拾われたのか、語る者はいなかった。
朝は、鐘より先に鳥が鳴いた。
春は、雪解けの水音が谷を賑わせた。夏は、蝉と、夕立の匂い。秋は、境内を埋める落ち葉の乾いた音。冬は、石段が凍った。その上を滑らぬよう歩く要領を、彼は誰に教わるでもなく覚えた。
季節がひと巡りするたび、山の音と匂いだけが、彼の暦になった。

 最年少の弟子だった。
箒を持つにはまだ小さすぎる手で、それでも彼は掃除の真似事をした。落ち葉を、集めては散らし、散らしては集めた。仕事にならない仕事を、誰も咎めなかった。
兄弟子たちは、彼を可愛がりも疎んじもしなかった。ただ、そこにいるものとして扱った。名を呼ばれることは、あっても多くはない。呼ばれない日が続いても、彼はそれを寂しいとは思わなかった。寂しさというものの形を、まだ知らなかったからである。
彼は、よく笑う子供だった。
竈の灰で顔を汚しては年上の弟子たちに笑われ、笑われたことにまた笑い返した。声の大きさだけは、誰にも負けなかった。
稽古場には、子供用の木剣が幾振りか置いてある。
誰の物と決まってはいない。使い終われば、棚へ戻す。それだけの決まりだった。彼はそれを振り回して兄弟子の真似をし、幾度も叱られた。
叱られても、返さなかった。
戻さずに持ち帰る子は、時々いた。彼も、その一人だった。

 あの人を初めて意識したのは、七つの年である。
朝の石段だった。霜が降りて、石の縁が白く光っている。他の兄弟子たちは彼を置いて、さっさと上っていく。幼い足では段の高さに追いつけない。彼はいつも一人、遅れて上った。
その朝、隣に誰かが立った。
見上げて、彼は息を呑んだ。祭酒だった。
この観でいちばん高い場所に立つ人が、なぜこんな朝早くに石段の途中にいるのか。幼い彼には分からなかった。ただ、その顔に驚くほど老いの影がないことだけは見て取れた。
「一段ずつ、数えなさい」
その人は、そう言った。
低く、静かな声である。命令ではなく、事実を教えるような口調だった。
彼は、言われるままに数え始めた。一、二、三――。数える声が、朝の境内に細く響いた。数えるうちに息が上がり、数が飛んだ。飛べば、やり直した。三度やり直した。
三度目に、隣を歩く人が歩幅を落とした。
その人は、彼の足に歩を合わせた。合わせたまま、麓と山門とで段の高さが違うわけを話した。人の脚は登るほど草臥れる、だから上の段ほど低く刻んである。刻んだ者の名は残っていないが、心遣いだけは残っている――
急がない声だった。
三百と六段目で、彼は声を上げた。三百と六。合ってますか、と聞いた。
合っています、と、その人は答えた。
それだけである。褒めもしなかった。
褒められなかったのに、その日、彼は境内を走った。走って、転んで、笑った。なぜ嬉しかったのかを、彼は今も説明できない。

 その日から、彼は心の中で、その名を呼ばなくなった。
知らなかったのではない。知らぬ者は、この観に一人もいなかった。祭酒——観のすべてを束ねる人である。師伯たちでさえ、その名の前では声を落とした。何百年この山を守ってきた人なのだと、兄弟子たちは言っていた。
呼ぶには、その名はあまりに遠かった。
代わりに、あの人、と呼ぶことにした。決めたというより、自然にそうなった。

 それから、機会があるたびに、彼はあの人の姿を目で追うようになった。
朝の水汲み。薬房での仕事。境内を歩く姿。何をしていても、その所作には無駄がなかった。急がず、乱れず、いつも同じ速さで日々を過ごしていた。
ある朝、あの人が薬研を挽いているのを、彼は戸の陰から見た。
見つかってはいけないと、なぜかそう思った。見ていることを知られれば、この静かな眺めが壊れてしまう気がした。彼は息を潜めて、その手つきを見ていた。
薬研の音は、規則正しかった。同じ間隔で、同じ強さで、石が石を擦る。その音が、境内の朝に静かに満ちていく。
あの人が、ふと、手を止めた。
振り返るのではないかと、彼は身をすくめた。だが、その人は振り返らなかった。ただ、薬研の中をじっと見つめていた。何を見ているのかは、分からなかった。
その横顔に、彼は初めて、何かを感じ取った。
寂しさと呼ぶには、あまりに静かなものだった。悲しみと呼ぶにも、違う気がした。ただ、その人の周りにだけ、他の誰の周りにもない透き通った距離があるように見えた。
誰も、その距離の内側には入れない。
同じ年頃の兄弟子たちは、遊びに興じ、時に喧嘩をし、時に泣いた。感情というものを、誰もが当たり前のように持ち歩いていた。
あの人だけが、そのどれも持たないように見えた。
持たないのではなく、持ちながら外へ出さずにいるのだと彼が気づくのは、もっと後のことである。

 思い出は、幾つもある。
書き取りの筆の持ち方を直された。指を一本ずつ、正しい場所へ置き直された。あの人の手は冷たく、乾いていた。直し終えると、もう一度書いてごらんなさい、と言った。書くと、また直された。
熱を出した晩に、額へ手を置かれた。
薬房の当番を覚えたのは、九つの年である。棚の順を覚え、匙の重さを覚え、丹砂の焦げる匂いを覚えた。薬を量るのは、いつもあの人の指だった。量りを使わない。摘まんで、それで合っている。確かめたくて、彼は後から量った。合っていた。
風鐸が、鳴っていた。
夜、寝床でその音を聞くのが好きだった。観は、家族の数だけ灯りのある場所である。彼にとって、それが家の匂いであり、家の音だった。
あの人が丹房で印を組むのを、彼は一度だけ見た。
十二の年である。戸の隙間から見た。指が長い。組む速さが、他の誰よりも遅かった。遅いのに、誰よりも正確だった。急がずに、順に、あるべき場所へ収めていく。
見ていて、いつか同じ手になりたいと思った。
それが、彼の望みの全部だった。
あの人を見上げることは、彼にとって、空を見上げることとほとんど同じだった。
空は、遠い。
遠いから、見上げ続けることができた。

 十四の年の秋は、よく笑った秋だった。
山の木々が、日ごとに色を深めていく。落ち葉掃きは朝夕の二度に増え、掃いても掃いても、境内は黄と紅に埋まった。掃きながら、彼はよく歌った。節のあやしい、自己流の歌である。下手だと笑われ、笑われてもやめなかった。
背丈が伸び、声が変わり始めていた。
変わりかけの声で、彼は他の弟子たちをよくからかった。からかわれた方も、負けじと言い返す。そういうやり取りが、彼は好きだった。
薬を届ける遣いも、この頃にはすっかり彼の仕事になっている。
麓の村々へ、竹籠を背負って下る。届け先の農夫の子供たちと、しばしば追いかけっこをした。息を切らして山門へ戻ると、また油を売っていたのか、と兄弟子に呆れられる。
夜、房でくだらない話をして、隣の弟子と共に眠りに落ちる。そんな夜が、当たり前に続いていた。
当たり前すぎて、それがいつか終わるものだとは、考えたこともなかった。

 その秋、丹房の様子が変わり始めた。
夜、灯りがいつまでも消えなくなった。あの人が丹房にこもる夜が増えていった。
何をしているのかを、彼は知らない。知る立場でもなかった。ただ、通りすがりに見る灯りの色が、以前より僅かに張り詰めているように感じた。

 あの日の四日前の晩、彼は廊下で、その声を聞いた。
薬を届けた帰り、遅くなっていた。境内は既に寝静まっていた。灯りは、丹房の一つを除いてすべて落ちている。その灯りだけが、夜露に濡れた石畳の上に、細く長い光の帯を落としていた。
丹房の方から、いつもとは違う声が漏れてきた。
低く、抑えた声である。それが、途中で大きくなった。
言葉には、ならなかった。
戸が閉まっている。声は壁を抜けてきたが、抜けてくる間に形を失っていた。ただ、大きくなった、ということだけが分かった。
声の主は、あの人だった。
あの人は、声を荒らげない人である。十四年、彼はあの山にいた。十四年で、あの人が声を大きくしたのを、一度も聞いたことがない。
弟子が丹砂の壺を割った時も、静かに話した。三度写経をやり直させて、それで済んだ。兄弟子が門限を破って麓の酒に酔って帰った時も、静かに話した。話が終わって、その兄弟子は泣いた。誰も殴られなかった。誰も怒鳴られなかった。
その人が、怒鳴っていた。
もう一人の声が、何かを返していた。誰の声かは分からない。ただ、あの人の声よりずっと小さい。詫びているようにも、抗っているようにも聞こえた。
彼は、その場を離れた。
聞いてはいけない気がした。理由は、うまく言えなかった。ただ、あの静かな人があれほどの声を出す事情に、自分が触れることは許されていないように感じた。
水を飲まずに、部屋へ戻った。寝床に入って、朝まで目を開けていた。

 翌朝、いつも通りの朝が来た。
あの人はいつも通り、水を汲み、薬研を挽いていた。昨夜の声など、なかったかのように。
彼はその姿を見て、少しだけほっとした。
あの声は、悪い夢だったのかもしれない。そう思うことにした。

 四日が過ぎた。
その夜、薬を届けての帰り道が、いつもより遅くなった。麓の川が増水して、渡し場が使えなかったのである。遠回りをして戻る頃には、山はすっかり暗くなっていた。麓の農家で礼にと持たされた蒸し餅の包みが、懐でまだ温かかった。
山道の入り口で空を仰ぐと、夜の底が赤かった。
匂いがした。煙である。夕餉の竈のそれとは違う。もっと重く、黒い匂いだった。
包みを、彼は落とした。落としたことに気づいたのは、ずっと後である。
彼は、走った。
背の竹籠が、走るたびに肩を打つ。中の空の薬箱が、かたかたと鳴った。石段を、二段飛ばしに駆け上がった。三百と六段を、これほど速く上ったことは、それまで一度もない。
その夜は、数えなかった。
山門をくぐった先を、彼は幾度も思い出す。思い出せない部分がある。火があった。梁が落ちる音がした。庭に人が倒れていた。動いている影が、ほとんどなかった。
数えようとして、数えなかった。数えてはいけない気がしたのである。誰にそう教わったのでもない。
誰かの名を呼んだ気がする。答えは、なかった。
丹房の前に、人が立っていた。
焔を背にして、剣を提げていた。
彼が最初に見たのは、顔である。筆の持ち方を直してくれる時の。額へ手を置いてくれた時の。静かな、いつもの顔だった。
名を呼ぼうとした。声は、出なかった。
剣が上がるのを、彼は見ていた。逃げるという考えは、浮かばなかった。あの人から逃げるという形の動きを、彼の体はそれまでの生涯で一度も覚えたことがない。
一太刀だった。
胸の奥で、何かが砕けた。骨ではない。もっと内側の、名を知らないものである。
地面が、近づいてきた。草の匂いがした。冷たい、夜露に濡れた草の匂いである。仰向けに倒れた視界の端に、燃える観の光が映っていた。
倒れながら、彼はまだ、あの人の顔を見ていた。何か言おうとした。今度も、言葉にならなかった。
あの人も、何も言わなかった。
足音が遠ざかったのかどうかは、火の音に紛れて分からない。あの人がその場に立っていたのか、跨いで行ったのか、彼を見下ろしていたのか、それとも一度も見なかったのか。
何ひとつ、分からない。
分かるのは、一つだけである。
――何も、言われなかった。
責める言葉も、詫びる言葉も、名を呼ぶ声さえも。
後年、彼は幾度も考えることになる。あの時、一言でも何かを言われていたら。責められていたら。詫びられていたら。憎むにせよ、赦すにせよ、始める場所があったはずだった。
何も言われなかった者は、どこからも、始められない。
その空白を抱えたまま、彼の十四年は、あの夜、終わった。

 傷は、癒えた。
癒えなかったのは、内側である。剣は臓腑を裂き、その通り道にあったものを砕いた。医者は、それを霊根と呼んだ。道を歩む者の、根である。砕けたものは、繋がらない。
彼は、術を失った。
十四で、失った。物心つく前から十四まで、あの山で覚えたものが、一夜で消えた。符を書いても、紙は縮れない。印を組んでも、指が形をなぞるだけである。
九つの年に覚えた薬房の棚の順は、残っている。
匙の重さも、丹砂の匂いも、残っている。
それが、何にも使えない。使えないものだけが、体の中にきちんと並んでいた。
それで、剣を持った。
術のない者にできることは、体を使うことだけである。彼は毎朝、剣を振った。誰にも習わずに。
教わった者は、教えた者の形になる。
筆の持ち方を直された時、彼の指はあの人の指の形になった。直されなくなった時、彼の字はあの人の字に似ていた。
彼は、誰の形にもなりたくなかった。なりたい形は、一つしかない。
その形の持ち主は、十年前、何も言わずにいなくなった。

 彼は、書き付けを残さない。
十年、一枚も書いていない。覚えたことは頭に入れ、頭の中で組み立て、頭の中で焼く。紙に書けば、紙が残る。残った紙を、誰かが読む。
あの人は、紙を焼いた。
彼も、焼く。真似をしていることに気づいたのは、幾年も後である。気づいてからも、やめなかった。
窓辺で、彼は右手を上げた。
指を組む。何も起きない。起きるはずがない。それでも彼は、毎朝、一度だけそれをする。
指の形は、正しかった。形だけは、体が覚えている。
十二の年に戸の隙間から見た、あの手の形である。急がずに、順に、あるべき場所へ収めていく。彼の指は、いま、同じ順を辿った。辿り終えて、何も起きなかった。
彼は手を下ろし、窓の外を見た。

 夜は、埋まらない。
部屋に戻り、灯りを点け、椅子に座る。何もしない。書き付けを取らないので、することがない。彼は座って、思い出す。
思い出すのは、いつも、同じ晩である。
四日前の、あの声だった。
あの晩、あの人は何を言ったのか。
それが、彼の知りたいことである。
なぜ殺したのか、ではない。理由なら、世間が用意している。丹を独り占めするためだと、皆が言う。彼はそれを信じたことがない。信じられないのではない。信じる気がないのである。
あの人が独り占めをするなら、彼を生かしはしなかった。
殺すべき時に殺さず、説明すべき時に説明せず、あの人はただ、立ち去った。
立ち去る前に、あの人は一度だけ、言葉を使った。
その言葉は、通じなかった。
通じなかったから、剣を取ったのだろう。彼はそう考えている。確かめる方法が、ない。確かめるには、あの晩の言葉を聞くしかない。
最後の言葉ではない。
最初の言葉である。
彼が欲しいのは、あの人が丹房で叫んだ、その中身だった。

 彼は、あの人の号を名乗っている。
望曉。夜明けを望む、という号である。あの人が二十の年に自ら選び、乱の後に捨てた。
拾ったのは、彼である。
将軍は、それを知って、一度だけ彼を見た。長く見て、何も言わなかった。それきり、この号に触れたことがない。
名乗るたびに、彼は思う。
あの人は、この名を沈めた。彼はそれを拾って、日の下へ出している。あの人がどこかでこの名を聞けば、必ず気づく。気づいて、来る。
来ないなら、こちらから探す。
三年、彼は探してきた。円を描いて、内側へ寄せてきた。何人死んだかは、覚えている。数えていないが、覚えている。全部で、幾人になったか。
数えては、いけない。
数えれば、それが本当のことになる。
彼は、そう思う癖がついている。誰に教わったのでもない。

 戸を叩く音がした。
役人が一人、書状を持って立っている。北の街道を、早馬が走った。臨江からの急報だった。
「望曉様。……将軍から、お目通しをと」
彼は書状を受け取り、卓の上に置いた。役人が下がるのを待って、封を切る。
短い文だった。
臨江城にて、十年前の罪人・陳霖を捕縛。翌未明、逃亡。手引きした者あり。共に川を下り、行方知れず。
彼は、それを二度読んだ。
三度目は、読まなかった。
窓の外は、暮れかけている。官衙の塀の向こうを、帰りの官人が歩いていく。誰かが誰かを呼び、誰かが笑った。
彼は、動かなかった。
長く動かなかった。灯りを点けるのも忘れて、部屋が暗くなっていく。卓の上の紙だけが、白く残った。
喜んでいるのか、そうでないのか。
彼自身にも、分からなかった。分かる必要が、この十年、一度もなかった。喜びも、憎しみも、誰かに向けて出すためのものである。出す相手が、彼にはいなかった。
やがて、彼は立ち上がった。
静かな立ち上がり方だった。椅子は鳴らず、床も鳴らない。彼は書状を火にかざし、燃やした。灰は、掌の中で握り潰した。

 部屋の隅に、龕がある。
彼はその扉を開けた。
中は空である。何も納めていない。牌もなく、香炉もなく、供物もない。
ただ、いちばん奥に、木剣が一振り置いてあった。
子供の背丈に合わせた、短い木剣である。柄の握りが磨り減って、木目が出ている。刃にあたる部分が、片側だけ黒ずんでいた。使い方の癖である。
十年、この剣は使われていない。
埃は、ひとつも積もっていなかった。

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